Shintaro Yamanaka Laboratory
review
第10回建築レビュー
二桁回に突入した建築レビュー。3ヶ月ほどすれば卒業設計・論文そして修士設計が始まり、できてあと数回となるかもしれない。また、ゼミナールで行っている読書会も最終回を迎えた。
ー建築レビュー#10「Atelier Peter Kis」/発表者:中野(M1)ー
今回はハンガリーを中心に活動する建築家のPeter Kis(ピーター・キシュ)のPrater Street(集合住宅)、Bazaltbor Winery(ワイナリー)、Magic Mountain in the Great Rock(展示・学習施設)の3作品である。
■Prater Street
ハンガリーの首都ブタペストに位置する集合住宅で、2007年に竣工した。敷地周辺の住居はロの字型の配置で中心に中庭を持つ構成となっているため、この建築も外観・構成ともにそれを踏襲している。同時に二方向避難のため必要となった二つの敷地を繋ぐ廊下をファサードデザインの要素とし、各住戸からは縦長のバルコニーや庇が突き出ている。この操作により、周辺景観に調和させる建築としながらも街への新たな顔を創り出している。
■Bazaltbor Winery
ハンガリーのvolcanic hillに位置するワイナリーである。施設の機能の大部分を地下に埋め、切妻とすることで周辺のブドウ農家のヴォリュームやその景観に合わせている。地上部分で大きなヴォリュームが必要となる部分は切妻を二棟連結させるような構成をとり徐々に解け、地中へと埋まっていく手法をとっている。
■Magic Mountain in the Great Rock
2012年、ハンガリーのとある動物園の猿山の中に展示機能やホールをもった施設が完成した。この猿山は100年ほど前に構造家と彫刻家が持ちうる技術と労力を結集して建設した。これは当時、動物園において野生に近い状態で駆け回る姿を展示する画期的なもので、さながら現代においては猿山遺産とでも呼べるものだった。猿山内部にはフラットな場所や大きな抜け空間が存在し、これはそれらを活用した建築である。現在、猿山は人間が登頂し、ブタペストのパノラマビューを楽しむ場所となっている。
地域主義―ゲニウス・ロキ
これら3作品は何れもその場所が持つ特性を生かした建築である。最もMagic Mountain in the Great Rockは特殊すぎる例であるが、その他2作品はヴォリューム操作、外観への配慮などその地域ならではのコンテクストを読み込んでいる。また、調和させるだけではなく、法律上発生した廊下やその地域の切妻屋根といったものをデザイン要素として新たに再構築しなおすことでその地域にありそうでない新たな建築となっている。
ー卒業設計ー
今回、修士設計は休み。卒業設計が本格的に始まり第2回目のエスキスとなった。敷地が辺境に設定してあり敷地のイメージがつかめないので、数日間電波も届かないところへ調査しに行くことになった方もおり、次回に期待がかかる。また、葬儀場のシークエンスを研究し、卒業設計に生かす方も大詰めである。
ーゼミナールー
「現代建築に関する16章」(五十嵐太郎)の読書回は最終回を迎え、“建築はどこへ行くのか”という広大で、不毛なテーマに挑んだ。学部生各々が自身の作品がホワイトボックスになりがちで何を建築しているのかということを捉える機会になったと思いたい。
山井
【参照資料出典元】
1.arcspace.com
http://www.arcspace.com/features/plant/bazaltbor-winery-/
2.archdaily
http://www.archdaily.com/93496/
Magic Mountain in the Great Rock
構造ダイアグラム/断面図/地上階平面図
Bazaltbor Winery
外観/断面図1/断面図2
Prater Street
外観/1F平面図/長手断面図