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第5回建築レビュー



今回で5回目を迎える研究室会議。皆会議に慣れてきたのか準備や進行がよりスムーズに行われた。建築レビューと卒業研究、修士研究の発表の他、夏の合宿やOBOG会についてなど幅広い件が議題に上がった。



ー建築レビュー#5「ALBERTO CAMPO BAEZA ―MORE WITH LESS 概念 重力 光の建築―」/発表者:矢嶋(M2)ー

スペイン生まれの建築家、ALBERTO CAMPO BAEZA

『車も、時計も、携帯電話ももたない。そして蔵書には建築書よりもむしろ詩集を多く持つ。スタジオでは5人ほどの素晴らしいスタッフとともに設計活動を行っており、この環境こそが「幸福」であると感じている。』


ーステレオトミックとテクトニックー

ゴッドフリート・ゼンパーによる概念で、ケネス・フランプトンにより「構法の詩学」という主題のもとに捉え返された。

ゼンパーによると、ステレオトミックとは単一部材を積み重ねながら空間を結合するものであり、光を内包する部分である。対してテクトニックとは様々な長さをもつ部材が空間的な領域を包含するために結合するもので、光から身を守る為に光を制限する部分である。

カンポ・バエザは建築の構成を地面の延長上のボディウムであるステレオトミックとその上部構造であるテクトニックという2層の構造形式で表現している。


ーカンポ・バエザの作品ー

カンポ・バエザの作品のうち特徴的な4つの作品が紹介された。

■De Blas House(2000)

下階にコンクリート造による重厚な音楽室(ステレオトミック)を、上階に鉄とガラスによる軽快な小屋(テクトニック)をもつ斜面地に計画された音楽堂。

■Caja General Bank Headquarters(2001)

日除け効果を生むコンクリートの外皮(ステレオトミック)と機能を担うフロア(テクトニック)に加え、駐車場としてポディウムをもつオフィス。

■Andalucia’s Museum of Memory(2009)

グラナダのカルロス5世宮殿の中庭の形状を取り入れた美術館機能(ステレオトミック)と薄い壁のようにそびえ立つ余機能を内包する空間(テクトニック)をもつ、アンダルシアの美術館。

■Offices for Junta Castilla Leo’n, Zamora(2012)

大聖堂の真横に造られ、大聖堂と同様の材料で造られた壁(ステレオトミック)と、中に造られたガラスの建築(テクトニック)で構成され、「上空に開いた石壁の箱」と表現される市庁舎。


ー手法による建築のイメージー

紹介された4つの建築は形状や機能が全て異なるものの、ステレオトミックとテクトニックという対極にあるものを混在させ建築化している点で同様の手法を用いている。

山中はステレオトミックは洞窟、組積造であり、各部材の圧縮力でバランスをとっている。地面の延長上に存在する「順重力的なもの」である。対してテクトニックは小屋、ラーメン的であり曲げを持つもの。浮遊感があり中空に場を生む「反重力的なもの」と説明を行った。「地面から派生してくる建築と反重力的な建築が初めからあったイメージであり、言葉の整理によってステレオトミックとテクトニックという概念にたどり着いたのではないか」との分析である。

カンポ・バエザの作品紹介という枠組みから、建築の起源や建築理論に基づく手法の分析にまで至った。大変充実したレビューであったと言えるだろう。



ー卒業研究ー

研究の方向性が具体化されていく時期であり、聴講する側も楽しい時期になってきた。本年度のテーマは建築の内外についての研究、住宅展示場についての研究、アニメと建築の関係についてなど、多岐にわたる。より個性的な研究が期待でき今後の発展が楽しみである。

一方で論文としての体裁や具体的な調査内容が伴わない者も出てきており心配な一面もある。各自が自分のやっていることに自信をもって、より積極的に調査を行って欲しいと願う。



ー修士研究ー

各々がテーマを発展させる一方で、少しペースダウンしてきたかのように思える。かく言う筆者も進展に難色を示しており、第一回中間発表に向けて一度引き締め直す必要があるだろう。



―全員参加の会だからこそ―

建築レビューも深みのある議論がなされ、研究もより具体的な方向に進んでいる。とても良い会議になってきたと思う。

他方で昨年同様欠席者も現れてきた。発言者も増えているが、人物が限られていることが気にかかる。本年度1年間の研究室の雰囲気をも決めかねない大事な時期である。慣れが悪い方向へ転ばぬよう、今一度背筋を伸ばして励みたいものである。研究発表に期待をしつつも一抹の不安を感じる会議であった。



亀井




【参照資料出典元】

1.a+u 2007年12月号/新建築社

2.a+u 2006年9月号/新建築社

3.UN Studio HP /http://www.unstudio.com/









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De Blas House

外観/内観/長手断面図

Caja General Bank Headquarters

外観/内観1/内観2/断面図

ステレオトミックとテクトニックの概念

Andalucia’s Museum of Memory

外観/内観/長手断面図

                         Offices for

   Junta Castilla Leo’n, Zamora

               外観/内観/1階平面図

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