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第4回建築レビュー



今年度、最初のプロジェクトであった戦後日本住宅の模型制作が終わり、次なる2つのプロジェクトが大きく動き出そうとしている。今年度はプロジェクトが豊富な分、学部生や院生もそこから何かを吸収し、卒業研究や修士研究に活用できることを期待している。



ー建築レビュー#4「モロッコ・フェズの旧市街地における都市構造と中庭型住宅」/発表者:山中ー

第4回建築レビューは山中がイスラームの都市を見るため、海外研修に行った際に訪れたフェズの旧市街地Fes el Bali(フェズ・エル・バリ)を紹介した。今回紹介されたフェズはスペインやポルトガルとの交易の中心地であり、今でもキャラバン商人の交易が行われている。またイスラーム法によってまちが形成されているため、イスラームの思想や文化が色濃く出ている集落である。


○立体的な迷宮の街路構成

旧市街地は世界最大の迷宮都市と言われている。高い城壁で囲われ、東西2.2km、南北1.2kmの大きさを持ち、その中に葉脈のような街路が張り巡らされている。まちは小高い丘に囲われているため、高低差が100mあり、この高低差によってまち全体が立体的な迷路のように形成されている。迷宮都市と言われる所以はそれだけではない。建物が街路に対して閉鎖的であるために、通りを歩く者はどこを歩いていても同じような場所を歩いているように錯覚してしまいやすい。また、建物の一部が上空を覆っているトンネル状の街路(サーバード)が多く、立体的な迷路性をさらに高めている。


○壁を共有した中庭型住居群の密集

イスラームの住宅では居室よりも大きい中庭がある。平面形状がいびつな住宅でも周囲の居室で歪みを調整し、中庭を整形している。この中庭は各居室をつなぐことで空間を一体的させ、外の街路空間には無い開放感を作り出している。


○イスラーム法による共有とプライバシーの両立

イスラーム法では住宅のプライバシーを不可侵の権利として位置づけており、覗き込まれないように門扉を向かい合わせにしないように規定し、窓の高さや屋上の塀の高さなども規定している。これは女性への守秘と住宅のプライバシーに通底する意識が少なからず関係している。一方で、集まって住むための共有認識についてもイスラーム法で定められており、隣人が自分の家の壁に梁材を打ち込むのを禁じてはならないのである。自分の家の壁を共有材として隣人に提供するということである。これも旅人に水を提供するというイスラームの法に通底する部分がある。


厳しい自然環境の中で密集して住むことは個人が生き抜くための必要な条件であった。その中でプライバシー意識と共有意識が併存し、長い時間を掛けてこのまちが形成されていったことは現代の人口過密な都市環境を考える上でも示唆に富んでいると山中は言う。



—卒業研究—

プロジェクトを無事に終え、着々と研究の方も進んできていると感じる。一方で、進度は例年より遅れているなとも感じている。なかなか議論になりづらい発表になっていることが何回かあり、進みきれない人がいる。研究の方向性を示した上で、それを刺激する情報がないと話は進みにくい。今後とも院生に相談する等して、戦略的に発表していってほしい。



―修士研究―

各自模索段階ではあるが、各自のテーマの方向性は少しずつ見えてきたのではないか。修士研究として、リアリティや切り口をどう出していくかが難しい所ではあるが、悪戦苦闘しながらも議論していってお互いに高めていきたい。












奥富




【参照資料出典元】

1.“イスラーム都市−アラブのまちづくりの原理” / 第三書館

2.“イスラーム世界の都市空間” / 法政大学出版局

3.“迷宮都市モロッコを歩く” / NTT出版

4.“モロッコの歴史都市フェスの保全と近代化” / 学芸出版社

 



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