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第2回建築レビュー



今年度、前期から活発にプロジェクトがあり、夏には下田まち遺産調査が終わり、今後もプロジェクトが動き出そうとしている。今年度はプロジェクトが豊富な分、学部生や院生もそこから何かを吸収し、卒業研究や修士研究に活用できることを期待している。



ー建築レビュー#2「アレハンドロ・アラヴェナ」/発表者:建石(M2)ー

第2回建築レビューは建石がチリ出身で2016年にプリツカー賞を受賞し、ヴェネツィアビエンナーレの建築部門におけるキュレーターを務めた建築家アレハンドロ・アラヴェナ(以下、アラヴェナ)である。独自のデザイン・アプローチを展開する彼は、ELEMENTAL(エレメンタル)という組織を設立し、その代表を務めている。世界が直面している状況の中で、今まさに求められている新たな建築家のあり方の1つを提示している。


○独自の建築思想とその実践

彼の独自の建築思想を表す試みとして、「Chairless(チェアレス)」という面白い作品がある。この作品は座るという行為を最もシンプルにデザインしたプロダクトであり、チリの地域固有の特徴を表している。建石はこの作品を例に、形に縛られているために、型の多様性を減らしているという現代の建築が抱えている問題について、アラヴェナは自身の活動を通じて型の多様性を生み出す試みを行っていると述べている。


○QUINTA MONROY(キンタモンロイ)

QUINTA MONROYはアラヴェナが7500ドルの補助金を使って築30年のスラムを100世帯が暮らせる住宅を計画したプロジェクト。アラヴェナは自力では最初から最後まで家を建てることのできない世帯のために「途中まで完成した住宅」を提供し、残りは住まい手が暮らしやすいように手を加えて完成していった。地域の特徴として、セルフビルドを行う能力に長けていたことが挙げられ、様々な制約を守りながら地域の特性を活かしたデザイン手法をここで用いている。アラヴェナの作品の中には、先に述べたような型の多様性を生み出そうとする試みが多い。一方で、コストや敷地条件などの「制約」を逆手にとって建築のデザインソースや手法として落とし込んでいる側面が見られるのではないだろうかと思える。


○か・かた・かたち

今回のレビューの中で一番議論が行われたのは菊竹清則が提唱した

「か・かた・かたち」とアラヴェナを照らし合わせた時に考えられることという議題であった。建石は発表の中で、“アラヴェナは現在の建築の流行りである、建築を作るルールや恣意性に疑問を持っていて建築を作る上で恣意性よりも、リサーチや地域の読み込みが大事になる”と考えていると述べている。それを踏まえ、山中は菊竹が提唱した「か・かた・かたち」の中でアラヴェナの強さは、「かた」の部分にあるのではないかと投げかける。アラヴェナの作品にみられるような「途中まで完成した住宅」などはセルフビルドによって「かたち」が変わっていくので、「かた」を提供した建築なのではないかといえるだろう。このような、建築に拡張性を持たせるような新たな「かた」を提案することが今の時代には必要なことであるように思われる。



—卒業研究—

設計組は論文の本論提出、論文組は学術用の2枚梗概提出を控え、皆慌ただしく作業している。進度は例年より遅れていると感じていたが、皆が担当の院生との議論を行い、論文の方向性や進め方を考える中で、徐々に形としてまとまってきたように思える。それは、プロジェクトなどを挟み忙しいながらもコツコツ進めてきた4年生の頑張りもさることながら、院生→教授→院生のように議論のルーティンを行ってきた成果だろう。今後とも院生に相談する等して、研究室会議では戦略的に発表していってほしい。毎度の会議において受動的にばかりならずに、自発的に考えることがこれからは特に必要になってくるだろう。



―修士研究―

各自模索段階ではあるが、各自のテーマ見えてきたのではないか。次の課題は修士研究として、リアリティやオリジナルの切り口をどう出していくかが難しい所ではあるが、悪戦苦闘しながらも議論していってお互いに高めていきたい。後輩としても、そのバックアップに努めていきたいと思う。



                     鈴木 崇史



 



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CENTRO DE INNOVACIÓN UC (2013)

Santiago, Chile

chairless (2010)

QUINTA MONROY (2003)

Iquique, Chile

Constitucion (2010)

Constitucion, Chile